ツムラ_メモ

大失敗を繰り返す。

Wed.26.OCT 2005 Class5

芸術とは作者だけの物ではない。

小説は比較的近代に生まれた芸術であり、誕生から400〜500年しか経過していない。
音楽の三要素である、メロディー、ハーモニー、リズム。
絵画の三要素である、線、色、構図(人により異なる)。
同様に小説にも三要素があり、それは、ストーリー、キャラクター、プロットである。
ストーリーやキャラクターは読者に対して非常に解り易い(もちろん重要ではある。)。
しかし、作者が最も苦労するのはプロットである。

文学にはテーマは二つ、ストーリーは一つしかないという考え方も存在する。
そのテーマとは別れと死であり、そのストーリーとは主人公が誰かと会って別れるというものである。
(それらのテーマやストーリーを排除した小説があったとしても、それは排除したことによりそのテーマーやストーリーを対極的に含んでいることになる。)



ノルウェイの森について考えてみると。

主人公はワタナベ
ヒロインは直子と緑。
その他の登場人物として、レイコ、永沢、ハツミ、キヅキなどが登場する。

テーマは、愛、死、記憶、時間・・などが考えられる。

ここで主人公とヒロインとのSEXについて考えてみる。
直子とは一回だけしかSEXしておらず、緑にいたってはSEXすらしていない。
しかし、主人公は女性とSEXすることには何の抵抗もない。
夜の街へ永沢と共に出かけて行き、何人との女性と寝てきた。
それなのに、何故主人公はヒロインとのSEXに慎重なのか。

ここで一つ意地悪な質問をしてみよう。
真のヒロインは直子と緑のどちらであろうか?
おそらく決められないであろう。
決められない理由は一つ、作者がそれを意図して書いているからである。
ここで考え方を改めなければならない。
「どちらが重要か」ではなく、「何故作者はそう書いたのか」を考えるのだ。

この小説の中で最も重要な人物関係は、主人公、キヅキ、直子、緑である。
この中でキヅキは死である。
そして、その対極にいるのが緑である。
直子は生と死に奪い合われているが、主人公にとっては死神である。
主人公には直子と緑は生と死である。
直子と緑は二人で一人の対極な存在なのだ。
文章中に直子と緑と主人公とのイベントは、必ずといっていいほど、直子と緑の両方にある事からもそれが解る。

この小説に登場する女性キャラクターにはある共通点がある。
それはハツミの永沢に対する思いであり、緑のケーキを放り投げるであり、レイコの主人に対する思いである。
それは絶対的信頼を求めることである。


来週に続く。